古物台帳の書き方──法律が求める5項目と「特徴」欄の具体例
古物台帳は、書く項目そのものは多くありません。法律が求めているのは5つだけです。にもかかわらず警察の立入りで指摘されるのは、たいてい決まった場所に集中します。「特徴」欄の書き方と、受入れ・払出しの区別、そして保存期間の起算日です。
この記事では、古物営業法16条が定める記載事項と、警視庁が公開している別記様式第15号の備考にそって、実際に何をどう書くのかを整理します。まず全体像から見てください。
この記事の内容(8項目)
法律が求めている記載事項は5つだけ
古物営業法16条は、売買・交換のため、または売買・交換の委託により古物を受け取ったとき、または引き渡したときに、その都度、次の事項を帳簿に記載することを求めています。
| 号 | 記載事項 | 書き方のポイント |
|---|---|---|
| 1号 | 取引の年月日 | 受け取った日・引き渡した日。伝票の起票日ではありません |
| 2号 | 古物の品目及び数量 | 一品ごとに書きます |
| 3号 | 古物の特徴 | その一点を見分けられる情報。あとで詳しく |
| 4号 | 相手方の住所、氏名、職業及び年齢 | 自動車を引き渡した相手方は除きます |
| 5号 | 法15条1項によりとった措置の区分 | 本人確認の方法。1号・4号は方法まで |
逆にいうと、ここに無いものは法定ではありません。よく見かける「買取価格」「担当者名」「在庫番号」といった欄は、あっても構いませんが実務欄です。
ただし代金と古物の区分だけは入れておくことを強くおすすめします。あとで説明する「1万円の判定」と「引渡し時の記載義務の判定」が、この2つが無いとできないためです。
「受入れ」と「払出し」で書く言葉が決まっている
帳簿の様式は施行規則17条1項で別記様式第15号と定められています。この様式は「受入れ」と「払出し」の2つのブロックでできていて、警視庁が公開している備考には、それぞれの「区別」欄に書く言葉まで指定があります。
受入れの「区別」
- 買受け
- 委託
払出しの「区別」
- 売却
- 委託に基づく引渡し
- 返還
紙でなくてもよい
法律が定めているのは記載事項であって、様式そのものではありません。施行規則17条2項は、記載すべき事項を取引の順に記載できる書類や、取引伝票その他これに類する書類でもよいとしています。
伝票方式にする場合は、同条3項により取引の順にとじ合わせることが求められます。バラバラのまま箱に入れておくのは要件を満たしません。
電磁的方法による記録も認められています。ただし法18条1項により、記録をした日から3年間、直ちに書面に表示できる状態にしておく必要があります。Excelで管理する場合も、求められたらすぐ印刷できることが前提です。
「品目」は一品ごとに書く
備考は、品目欄を一品ごとに記載することとしています。同じ日に同じ人から3点買い取ったなら、まとめて1行にせず3行に分けます。
正しい書き方
- 腕時計|数量1
- ネックレス|数量1
- 指輪|数量1
指摘される書き方
- 貴金属一式|数量3
- まとめ買い|数量1
- 雑貨|数量5
「文庫本 12冊」のように種類が同じものはまとめられます。判断に迷ったら、あとで1点を特定して照会できるかで考えてください。
「特徴」欄には、公式に書き方の例がある
いちばん迷うのが特徴欄です。ここは警視庁が公開している別記様式第15号の備考に、そのまま使える例が載っています。
| 区分 | 備考にある記載例 |
|---|---|
| 衣類 | 上衣、シングル、鈴木のネーム入り、チョッキ、ねずみ色裏付き、ズボン、後ポケットふたなし |
| 時計 | オメガ、何型、何番、文字板に傷あり |
| 自動車 | 自動車検査証に記載され、又は記録された自動車登録番号又は車両番号、車名、車台番号及び所有者の氏名又は名称等 |
共通しているのは「他の同種品と見分けられるか」
3つの例に共通しているのは、その一点を他の同じような品物と区別できる情報になっている点です。「時計」「洋服」だけでは足りません。
盗品の追跡照会が来たときに、この欄だけで品物を特定できるかどうかが実質的な基準になります。ブランド・型番・製造番号・傷や汚れの位置といった、あとから照合できる情報を書いてください。
相手方の記載を省略できる場合がある
備考には、現に使用している帳簿に既に住所・氏名・職業・年齢が記載してある相手方については、氏名以外の事項で異動のないものの記載を省略できると書かれています。
常連の方の取引で毎回フルに書き直す必要はない、という趣旨です。ただし省略すると、あとから見た人がどの記録を参照すればよいか分からなくなります。備考欄に「通番○と同一人」と残しておくと追えます。
書かなくてよい取引がある(引渡しのとき)
ここが古物台帳でいちばん誤解されている点です。法16条にはただし書があり、施行規則18条1項が「記載を要しない古物」を定めています。
条文の書き方が二重否定で読みにくいのですが、結論はこうです。引き渡したときに記載義務があるのは、次の4区分だけです。
引渡しでも記載が必要
- 美術品類
- 時計・宝飾品類
- 自動車(部分品を含む)
- 自動二輪車及び原動機付自転車
引渡しの記載は免除
- 衣類
- 書籍
- 写真機類
- 事務機器類
- 機械工具類
- その他の区分
受け取るときは全部が対象
免除されるのは引き渡したときだけです。買受け・委託で受け取るときは、古物の区分にかかわらず全部が記載対象になります。
「衣類は書かなくていい」と覚えてしまうと、買取のほうまで書かなくなります。これが実際によくある指摘です。
1万円未満でも本人確認が必要な古物がある
本人確認(法15条1項の措置)は、対価の総額が1万円未満なら不要とされています。金額は施行規則16条1項で1万円と定められています。
ただし同条2項に例外があり、次の7種類は金額にかかわらず確認が必要です。
| 号 | 1万円未満でも確認が必要な古物 |
|---|---|
| 1号 | 自動二輪車及び原動機付自転車(汎用の部分品を除く部分品を含む) |
| 2号 | エアコンディショナーの室外ユニット及び電気温水機器のヒートポンプ |
| 3号 | 専ら家庭用コンピュータゲームに用いられるプログラムを記録した物 |
| 4号 | 光学的方法により音又は影像を記録した物(CD・DVD等) |
| 5号 | 電線 |
| 6号 | グレーチング(金属製のものに限る) |
| 7号 | 書籍 |
古本の買取で1点500円だから確認不要、とはなりません。書籍は7号に入っています。
なお、売却・交換の委託を受けようとするときも法15条1項の対象です。買い取っていないので代金は発生しませんが、確認は必要になります。
保存は「最終の記載をした日」から3年
法18条1項は、帳簿を最終の記載をした日から3年間、営業所に備え付けることを求めています。
ここでよくある間違いが、起算日を「作成日」で数えてしまうことです。1年ずれるので、まだ備え付けが必要な帳簿を捨ててしまいます。
電磁的方法で記録している場合は、記録をした日から3年間、直ちに書面に表示できる状態にしておきます。
また同条2項により、帳簿をき損・亡失し、または滅失したときは、直ちに営業所の所在地を管轄する警察署長に届け出ることになっています。「気づいたら」ではありません。
よくある質問
- Q. 古物台帳は手書きでないといけませんか。
- いいえ。法18条1項は電磁的方法による記録も認めています。ただし、記録をした日から3年間、直ちに書面に表示できるようにして保存する必要があります。Excelで管理する場合も、求められたときにすぐ印刷できる状態にしておいてください。
- Q. 1日に何度も取引がある場合、まとめて書いてもいいですか。
- 法16条は「その都度」記載することを求めています。また別記様式第15号の備考は品目を一品ごとに記載することとしています。1日分をまとめて1行にすることはできません。
- Q. 買取価格は書かなければいけませんか。
- 法16条の記載事項には含まれていないので、法律上の義務ではありません。ただし確認義務に1万円という線引きがあるため、書いておかないと「なぜこの取引で確認をしなかったのか」をあとから説明できなくなります。実務欄として持たせておくことをおすすめします。
- Q. 衣類を売ったときは本当に台帳に書かなくていいのですか。
- 施行規則18条1項により、引き渡したときに記載義務があるのは美術品類・時計宝飾品類・自動車・自動二輪車等の4区分だけです。衣類の引渡しは免除されます。ただし買い受けたときは記載が必要です。免除される場合でも、在庫管理のために記録しておくこと自体は問題ありません。
- Q. 帳簿を紛失してしまいました。どうすればいいですか。
- 法18条2項により、直ちに営業所の所在地を管轄する警察署長へ届け出る必要があります。条文は「直ちに」となっています。
- Q. 古物市場主も同じ様式ですか。
- いいえ。古物市場主の帳簿は別記様式第16号です(施行規則17条1項)。記載事項も法17条で別に定められており、取引の年月日・品目・数量・特徴に加えて、取引の当事者の住所及び氏名を記載します。
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本記事は法令および官公庁の公表資料をもとに整理した参考情報です。法令への適合を保証するものではありません。実際の義務内容は e-Gov法令検索および所管官庁にご確認ください。内容は2026-08-21時点のものです。