点呼記録簿の書き方|記載5項目と1年保存
点呼記録簿とは、運転者等ごとに点呼を行うたびに、その内容を書き残す帳簿です。貨物自動車運送事業輸送安全規則7条5項が記録と保存を求めています。書く項目そのものは多くありません。にもかかわらず巡回指導で指摘が集中するのは、決まった場所です。号立ての5項目だけを埋めて、条文の本文が求めているものが抜けているという形です。
この記事では、7条5項が求めている記録事項を条文の並びどおりに分解し、実際に何をどう書くのかを整理します。まず、記録の一生から見てください。
この記事の内容(11項目)
- 点呼記録簿の記載事項は「5項目」では足りない
- 「点呼を行った旨」をどう書くか
- 「報告」の中身が毎回同じになるとき
- 点呼記録簿の「方法」欄は、選択肢を決めておく
- 方法が混ざる日をどう書くか
- 点呼記録簿とアルコール検知器|規則7条4項は別の条項
- 「常時有効に保持」を記録の側から支える
- 点呼記録簿の保存期間は1年|起算日をどこに置くか
- 1年を過ぎても残すかどうか
- 点呼記録簿で巡回指導に指摘される空欄
- 点呼を行った者の氏名が抜ける場面
- 車両を識別できる表示が抜ける場面
- 点呼記録簿を電子で残すときに決めておくこと
- 点呼記録簿に法定の様式はない|欄を自分で決める
- 点呼記録簿の1枚の単位|1日1枚か、1か月1枚か
- 点呼記録簿と運行指示書のつながり
- 点呼記録簿を続けるための決めごと
- 空欄をその場で見つける
- 毎月まとめて見る日を決める
- よくある質問
点呼記録簿の記載事項は「5項目」では足りない
点呼記録簿の記載事項は、号立ての5つに加えて、条文の本文が求めている3つがあります。規則7条5項は、次のように書かれています。
運転者等ごとに点呼を行った旨、報告、確認及び指示の内容並びに次に掲げる事項を記録し、かつ、その記録を一年間保存しなければならない。
「次に掲げる事項」の前に、すでに3つ挙がっています。点呼を行った旨・報告・確認及び指示の内容です。ここを読み飛ばして号立てだけを様式にすると、欄が足りません。
| どこに書いてあるか | 記録すること |
|---|---|
| 本文 | 点呼を行った旨 |
| 本文 | 報告の内容(運転者から受けたもの) |
| 本文 | 確認及び指示の内容(運行管理者が行ったもの) |
| 1号 | 点呼を行った者及び点呼を受けた運転者等の氏名 |
| 2号 | 自動車登録番号又は車両番号その他その事業用自動車を識別できる表示 |
| 3号 | 点呼の日時 |
| 4号 | 点呼の方法 |
| 5号 | その他必要な事項 |
「報告」と「確認及び指示」は、誰から誰への話かが逆になりやすい欄です。報告は運転者から運行管理者へ、確認及び指示は運行管理者から運転者へ向かいます。同じ欄にまとめると、どちらが欠けても気づけません。
「点呼を行った旨」をどう書くか
「行った旨」は、行ったこと自体を示すものです。実務では、点呼を行った者の署名や押印、電子なら操作した人のIDがこれに当たる形で運用されています。チェック1つで済ませる場合は、誰が付けたチェックかが分かる必要があります。
点呼を行った者の氏名は1号で別に求められているので、氏名欄とは分けて考えます。氏名だけあって「行った旨」が無い、という様式にならないように欄を作ります。
「報告」の中身が毎回同じになるとき
報告は運転者から上がってくるものなので、こちらから書く欄ではありません。とはいえ「異常なし」だけが並ぶと、聞いていないのか異常が無かったのかが読めなくなります。
何について報告を受けたのかが分かる形にすると、この問題は減ります。体調、疾病、疲労、飲酒、睡眠。項目を立てておき、そこに対する報告を書く形です。
点呼記録簿の「方法」欄は、選択肢を決めておく
点呼記録簿の4号「点呼の方法」は、あとから見て再現できる言葉で書きます。自由記述にすると、人によって書き方が変わって比べられなくなります。
あらかじめ選択肢を決めておき、そこから選ぶ形にすると、空欄も表記ゆれも減ります。プルダウンにしておくと、書く側の手も止まりません。
あとから読める書き方
- 対面
- 電話(対面等ができない業務)
- IT点呼
- 遠隔点呼
指摘されやすい書き方
- 空欄
- 「実施」だけ
- 「〇」だけ
- 毎回同じ記号が並ぶ
対面によらない点呼が認められる場面や条件は、事業の形態や設備によって変わります。自社がどれに当たるかは、所轄の運輸支局または適正化実施機関に確認してください。この記事では、記録簿にどう書くかだけを扱います。
方法が混ざる日をどう書くか
1日の中で方法が変わることがあります。乗務前は対面、乗務後は電話、という形です。点呼ごとに方法を書く欄を持たせておくと、この日も書けます。1日1枚の様式で方法欄が1つしかないと、どちらかしか書けません。
中間点呼を行った日も同じです。中間点呼は規則7条3項が定める別の点呼なので、乗務前・乗務後とは行が分かれます。
点呼記録簿とアルコール検知器|規則7条4項は別の条項
点呼記録簿に書くアルコールの確認は、規則7条4項が根拠です。記録事項を定めた5項とは別の項なので、条文を追うときに混ざりやすいところです。
4項は、アルコール検知器を営業所ごとに備え、常時有効に保持することを求めています。確認の方法は、目視等による確認と、検知器を用いた確認の両方です。
| 何を | 規則のどこ |
|---|---|
| 記録事項と1年保存 | 7条5項 |
| アルコール検知器を営業所ごとに備える/常時有効に保持 | 7条4項 |
| 中間点呼(乗務前後の点呼がいずれもできない業務) | 7条3項 |
検知器そのものの記録欄は、記録簿の「確認の内容」に含めて書く形が扱いやすくなります。数値を書くのか、有無だけを書くのかは、社内で先に決めておきます。決めずに運用すると、同じ営業所の中で書き方が割れます。
「常時有効に保持」を記録の側から支える
4項が求めているのは、検知器を備えることと、常時有効に保持することの2つです。保持しているかどうかは、点呼記録簿だけでは示せません。検知器そのものの点検や校正の記録は、別に残すことになります。
点呼記録簿の側でできるのは、どの検知器を使ったかを書いておくことです。営業所に複数台あるなら、機器の番号を書く欄を持たせておくと、あとで故障が分かったときに影響範囲を追えます。
点呼記録簿の保存期間は1年|起算日をどこに置くか
点呼記録簿の保存期間は、規則7条5項が定める一年間です。条文は「その記録を一年間保存しなければならない」とだけ書いています。
実務でつまずくのは年数ではなく、どこから1年を数えるかです。1日1枚で運用しているなら、その用紙の日付から1年です。1か月1枚の様式なら、その月の最終記載日から数えることになります。
迷わない運用
- 1日1枚。用紙の日付から1年
- 月ごとにまとめ、廃棄予定日を表紙に書く
- 廃棄予定日を自動計算にする
迷う運用
- 年度でまとめ、起算日が分からなくなる
- 「1年経ったら捨てる」とだけ決めている
- 電子と紙が混在し、どちらが原本か不明
他の帳簿と保存年数が違う点にも注意が要ります。点呼記録簿は1年ですが、同じ営業所で保管する帳簿には年数の違うものがあります。まとめて同じ箱に入れると、短いほうに合わせて捨ててしまうことがあります。
1年を過ぎても残すかどうか
1年は保存しなければならない下限です。それより長く残すことは禁じられていません。事故や監査で過去にさかのぼって確認したい場面を考えると、少し長めに置いている事業者もあります。
ただし、残すと決めたなら置き場所も決めます。「捨てていないだけ」の状態は、求められたときに出せません。出せない記録は、残していないのと同じに扱われます。
点呼記録簿で巡回指導に指摘される空欄
点呼記録簿で指摘されるのは、書き方の巧拙ではなく空欄です。埋まっていない欄は、その確認を行っていないと読まれます。
「確認及び指示の内容」が毎回同じ文言で埋まっているのも、空欄と同じに見られます。その日に実際に伝えたことを書きます。天候、道路の状況、その運転者の体調。書くことが無い日は、無いと分かる書き方にします。
指摘は、書いた人を責めるために出るものではありません。その欄が埋まっていないと、確認したことを示す手段が他に無いという話です。だからこそ、埋められる形の様式にしておくことが先になります。
点呼を行った者の氏名が抜ける場面
点呼を行った者の氏名は、運行管理者が自分で書くため抜けやすい欄です。補助者が行った点呼では、補助者の氏名を書きます。誰が行ったかが記録に残っていないと、その点呼が有効だったかを後から確かめられません。
車両を識別できる表示が抜ける場面
2号は「自動車登録番号又は車両番号その他その事業用自動車を識別できる表示」です。社内の車番で運用している場合、その車番から実際の車両にたどり着けるかが分かれ目になります。車番と登録番号の対応表が別にあるなら、それも残しておきます。
点呼記録簿を電子で残すときに決めておくこと
点呼記録簿を電子で残す場合も、規則7条5項が求める記録事項と1年保存は変わりません。変わるのは、原本がどちらかという点です。
紙に書いてから入力する運用にすると、紙と電子の両方が残ります。どちらを原本とするかを先に決めます。決めていないと、巡回指導でどちらを出すかで迷います。
| 決めること | 決めておかないと |
|---|---|
| 原本はどちらか | 両方出すことになり、食い違いが見つかる |
| 修正したときの履歴 | 書き換えたのか元からそうなのかが分からない |
| 1年経過後の消し方 | 消える設定だと、必要な期間より先に消える |
| 出力の形 | 求められたときにすぐ紙にできない |
電子帳簿として扱う場合の要件は、事業の内容や採用するシステムによって変わります。この記事では扱いません。採用するシステムの説明と、所轄への確認で進めてください。
点呼記録簿に法定の様式はない|欄を自分で決める
点呼記録簿の様式は、法令で決まっていません。規則7条5項が定めているのは記録する事項と保存期間であって、紙の形ではありません。そのため欄の並びは自社で決められます。
決められるということは、決めないと運用が割れるということでもあります。同じ営業所で人によって書く場所が違う、という状態がここから生まれます。
先に決めておくこと
- 1枚の単位(1日1枚か、1か月1枚か)
- 点呼の方法の選択肢
- アルコールの確認を数値で書くか有無で書くか
- 記入を終える時刻の目安
決めずに始めると
- 人によって書く欄が違う
- 空欄なのか対象外なのか読めない
- あとから集計できない
欄を増やすほど良い記録になるわけでもありません。書ききれない欄は空欄になり、空欄は「確認していない」と読まれます。まず条文が求める8つを確実に埋められる形にして、そこから足すのが安全です。
点呼記録簿の1枚の単位|1日1枚か、1か月1枚か
点呼記録簿の1枚の単位は、保存の数え方と巡回指導の見られ方の両方に効きます。どちらが正しいという決まりはありません。運用で選びます。
| 1枚の単位 | 向いている場面 | 気をつけるところ |
|---|---|---|
| 1日1枚(全運転者を1枚に) | 運転者が少なく、1日で完結する | 人数が増えると欄が足りない |
| 1運転者1か月1枚 | 運転者ごとの傾向を見たい | 日をまたいで空欄が残りやすい |
| 1点呼1行(台帳形式) | 件数が多い。集計したい | 紙に出すと読みにくい |
どれを選んでも、起算日を紙の上で言えることが条件になります。1日1枚ならその日付、1か月1枚ならその月の最終記載日です。ここが曖昧だと、1年経ったかどうかを誰も判断できません。
点呼記録簿と運行指示書のつながり
点呼記録簿と運行指示書は、対面によらない点呼を行う場面でつながります。運行指示書は規則9条の3が定める別の書類で、記載事項も保存期間も点呼記録簿とは違います。
| 点呼記録簿 | 運行指示書 | |
|---|---|---|
| 根拠 | 規則7条5項 | 規則9条の3 |
| 保存 | 一年間 | 運行の終了の日から一年間 |
| 単位 | 点呼ごと | 運行ごと |
| 途中の変更 | — | 写しに変更内容を記載し、運転者の携行分にも記載させる(2項) |
運行指示書の記載事項は7つあり、運行の開始と終了の地点・日時、乗務員等の氏名、経路と主な経過地の発着日時などが含まれます(9条の3)。運行の途中で開始終了や経路が変わったときは、写しに変更内容を書き、運転者が携行している指示書にも書かせることが2項に定められています。
点呼記録簿の「指示の内容」に運行指示書の中身を書き写す必要はありません。別々の書類として、それぞれの欄を埋めます。両方に同じことを書くと、片方を直したときにもう片方が古いまま残ります。
点呼記録簿を続けるための決めごと
点呼記録簿が形だけになるのは、書く時間が確保されていないときです。点呼そのものは毎日必ず発生するので、記録に回せる時間は数分しかありません。
続けるための決めごとは3つで足ります。選択肢にできる欄はすべて選択肢にする。自由記述はその日だけの欄に絞る。空欄が残ったらその場で聞く。
空欄をその場で見つける
あとからまとめて見直すと、書いた本人がもう覚えていません。点呼を終えたその場で、欄が埋まっているかを見ます。数秒で終わります。
毎月まとめて見る日を決める
月に一度、その月の記録を通して見る日を決めておくと、書き方の崩れに気づけます。同じ文言が並んでいないか、方法の欄が偏っていないか。巡回指導の直前に見返すのでは、直す時間がありません。
よくある質問
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本記事は法令および官公庁の公表資料をもとに整理した参考情報です。法令への適合を保証するものではありません。実際の義務内容は e-Gov法令検索および所管官庁にご確認ください。内容は2026-09-20時点のものです。