会社に必要な書類の保存年数を業種横断で並べる
書類の保存年数は、年数だけを並べた表では使えません。同じ「3年」でも、何の日から数えるかが書類ごとに違うためです。
ここに並べるのは、条文の本文を確かめたものだけです。年数・起算日・根拠条文の3つがそろって初めて、棚の運用に落とせます。
分野は運送・人材派遣・不動産・古物・警備・労務の6つです。自社に関係する行だけを抜き出して使ってください。
この記事の内容(8項目)
- 書類の保存年数は起算日とセットで見る
- 年度で束ねると合わない書類がある
- 一覧に根拠を書いておく
- 運送の書類の保存年数と起算日
- 指導監督の記録だけ場所の指定がある
- 人材派遣・不動産・古物の書類の保存年数
- 警備と労務の書類の保存年数
- 年次有給休暇管理簿の起算
- 書類の保存年数は法令によって決まり方が違う
- 省令まで見る
- 読み替えのあるもの
- 保存年数の一覧を自社の形に落とす
- 一覧に日付を入れる
- 一覧に載せる前に棚を見る
- 業種が重なる会社
- 誰が使う一覧かを決める
- 束ね方は起算日の型で決まる
- そもそも定めが無い書類
- 保存年数ではなく選任や資格の定め
- 一覧に無い書類
- 見直す時期を決める
- 保存年数の一覧でつまずくところ
- 捨てる判断まで書いておく
- 起算日の取り違えのほうが多い
- よくある質問
書類の保存年数は起算日とセットで見る
書類の保存年数を間違える原因は、年数そのものより起算日にあります。年数は条文に数字で書いてあるので、読み違えることは少なくなります。
一方、起算日は書類によって5通りに分かれます。
| 起算日の型 | 例 |
|---|---|
| 記録した日 | 点呼記録簿 |
| 出来事が終わった日 | 運行の終了の日/労働者派遣の終了の日/退職の日 |
| 最終の記載をした日 | 古物台帳/宅建業の従業者名簿 |
| 閉鎖した日 | 宅建業の帳簿(各事業年度の末日に閉鎖) |
| 期間が満了した後 | 年次有給休暇管理簿 |
作成日から数える、と思い込んでいると、長く使い続ける帳簿でまだ期間内のものを捨てます。古物台帳や宅建業の従業者名簿は、最後に書いた日から数えます。
年度で束ねると合わない書類がある
書類を年度ごとに束ねて、3年前の束から捨てる運用はよく取られます。とはいえ、起算日が出来事の側にある書類は、この運用と合いません。
派遣管理台帳は労働者派遣が終わった日から3年なので、就業が続いている間は起算が始まりません。作成年度で捨てると、まだ数えが始まっていないものを処分することになります。
一覧に根拠を書いておく
年数と起算日だけの表だと、誰かが「本当にそうか」と思ったときに調べ直しになります。根拠の列を置いておけば、その場で条文に当たれます。
下の表では、確かめた条文をそのまま書いています。ここに無い書類は、この記事では扱っていないものです。
運送の書類の保存年数と起算日
運送の帳簿は、年数が1年と3年に分かれ、起算日はすべて違います。根拠は貨物自動車運送事業輸送安全規則です。
| 書類 | 年数 | 起算日 | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 点呼記録簿 | 1年 | 記録した日 | 輸送安全規則7条5項 |
| 運行指示書及びその写し | 1年 | 運行の終了の日 | 同9条の3第4項 |
| 運転者等台帳 | 3年 | 運転者でなくなった日 | 同9条の5第2項 |
| 指導及び監督の記録 | 3年 | 実施(営業所において保存) | 同10条1項 |
このほか、真荷主から引き受けた運送を他社に利用させたときに作る実運送体制管理簿は、運送が完了した日から1年間、営業所に備え置くことになっています(貨物自動車運送事業法24条の5第1項)。
運行指示書は「及びその写し」と書かれています。運転者が携行していた分と営業所の写しの両方が対象です。片方だけ残すと足りません。
指導監督の記録だけ場所の指定がある
10条1項は「その記録を営業所において三年間保存」としています。本社でまとめて保管すると、営業所には無いことになります。
作成を本社で行うことは差し支えありません。記録を営業所に置く形にしておけば条文に沿います。
それぞれの中身は点呼記録簿の書き方、運行指示書の書き方、運転者等台帳の記載事項、指導監督の12項目で扱っています。
人材派遣・不動産・古物の書類の保存年数
人材派遣の2つの台帳は、年数も起算日も同じです。作る人と書く中身だけが違います。
| 書類 | 年数 | 起算日 | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 派遣元管理台帳 | 3年 | 労働者派遣の終了の日 | 派遣法37条2項/規則32条 |
| 派遣先管理台帳 | 3年 | 労働者派遣の終了の日 | 同42条2項/規則37条 |
不動産は、同じ宅建業法の中でも書類によって年数が大きく違います。
| 書類 | 年数 | 起算日 | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 宅建業の帳簿 | 閉鎖後5年(自ら売主となる新築住宅に係るものは10年) | 各事業年度の末日をもって閉鎖 | 宅建業法施行規則18条3項 |
| 宅建業の従業者名簿 | 10年 | 最終の記載をした日 | 同規則17条の2第4項 |
従業者名簿の10年は、他の名簿類と比べて長い部類です。しかも最終の記載をした日から数えるので、長く使った名簿ほど手放せる日が遅くなります。
| 書類 | 年数 | 起算日 | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 古物台帳 | 3年 | 最終の記載をした日 | 古物営業法18条1項 |
古物台帳の書き方は古物台帳の書き方、派遣の台帳は派遣管理台帳の3年保存で扱っています。
警備と労務の書類の保存年数
警備業は、1つの規則の中で保存期間が3通りに分かれています。警備業法施行規則66条2項です。
| 書類 | 年数 | 起算日 | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 警備員名簿 | 1年 | 退職の日(退職した後においても) | 警備業法施行規則66条2項 |
| 指導計画書 | 2年 | 実地に指導した日 | 同 |
| 教育計画書・教育の実施記録 | 2年 | 当該年度の終了の日 | 同 |
3通りの起算日を棚でどう分けるかは警備業の書類の保存年数で扱っています。
労務の書類は、本則と実際の年数が違うところが特徴です。
| 書類 | 本則 | 当分の間 | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 労働者名簿・賃金台帳ほか | 5年 | 3年 | 労基法109条/附則143条1項 |
| 年次有給休暇管理簿 | 5年 | 3年 | 労基則24条の7/則71条 |
「うちは書類はぜんぶ3年」とまとめてしまうと、読み替えが外れたときに労務の書類だけが5年に戻ります。本則が5年であることを控えておくことになります。
年次有給休暇管理簿の起算
則24条の7は「当該有給休暇を与えた期間中及び当該期間の満了後」と書いています。与えている最中も保存の対象で、期間が満了してからさらに数える形です。
ほかの書類のように「◯◯の日から」という書き方ではないので、一覧に載せるときは注意が要ります。
書類の保存年数は法令によって決まり方が違う
書類の保存年数は、どの法令が定めているかで決まり方の癖が違います。同じ会社の中でも、根拠が違えば書きぶりも違います。
| 決まり方 | 特徴 | 例 |
|---|---|---|
| 法律に年数がある | そのまま読める | 労基法109条(5年) |
| 法律に年数、省令に起算日 | 法律だけでは足りない | 派遣法37条2項+規則32条 |
| 省令に年数と起算日 | 法律には出てこない | 宅建業法施行規則18条3項 |
| 本則と読み替えが別 | 実際の年数が本則と違う | 労基法109条+附則143条1項 |
| 同じ条文に複数 | 1つの条文で年数が分かれる | 警備業法施行規則66条2項 |
法律の条文だけを見て一覧を作ると、起算日が抜けます。派遣管理台帳は法律に「三年間保存」とあるだけで、起算日は施行規則にしか書かれていません。
省令まで見る
年数が法律にあっても、起算日が省令にあることがあります。一覧に起算日の列を置くと、省令まで見る必要があることに気づけます。
年数の列だけの一覧を作ると、この違いが表に出ません。結果として、作成日から数える形で運用されてしまいます。
読み替えのあるもの
労務の2つは、本則が5年で「当分の間」3年です。読み替えの条文は、労基法109条には附則143条1項、労基則24条の7には則71条と、別々に置かれています。
一覧には本則と実際の両方を書いておきます。読み替えが外れたときに、どこが変わるかがその場で分かります。
保存年数の一覧を自社の形に落とす
一覧はそのまま貼っても使われません。自社にある書類だけに絞ると動きます。関係の無い行が並んでいると、探す時間が増えます。
一覧に日付を入れる
いつ作った一覧かが分からないと、どれだけ古い情報かも分かりません。確かめた日を一覧の隅に入れておきます。
日付が入っていれば、次に見る人が更新の要否をその場で判断できます。
一覧に載せる前に棚を見る
法令の一覧から自社の一覧を作ると、実際には持っていない書類まで並びます。逆に、法令の一覧に無い社内の書類は載りません。
棚にあるのに一覧に無い書類は、年数も起算日も決まっていない状態で置かれ続けます。棚から始めると、この抜けに気づけます。
そのうえで、法令に定めが無い社内の書類にも、自社で年数を決めておきます。決めていないと、誰も捨てられません。
業種が重なる会社
1つの会社が複数の分野にまたがることがあります。運送と倉庫、不動産と建設、といった形です。その場合、一覧の行はそのぶん増えます。
分野ごとに別々の一覧を持つと、どちらに載っているか分からない書類が出てきます。1枚にまとめて、分野の列で分けるほうが探せます。
そのうえで、事業所によって扱う書類が違うことがあります。事業所ごとに、その場所にある書類だけを抜き出した紙を貼っておくと使われます。
誰が使う一覧かを決める
一覧を使うのは、書類を作る人ではなく処分する人です。処分の場面で開くものなので、棚のそばに置いておくほうが使われます。
総務のファイルの中にあると、年1回の作業のときに探すところから始まります。保管の場所に貼っておけば、その場で判断できます。
束ね方は起算日の型で決まる
起算日が「記録した日」なら、年度で束ねて古い順に捨てられます。一方、「出来事が終わった日」なら、終わったものから抜いて別に束ねる形になります。
年度で束ねられる
- 点呼記録簿(記録した日)
- 教育の実施記録(年度の終了の日)
- 賃金台帳など
終わったものから抜く
- 運転者等台帳(運転者でなくなった日)
- 派遣管理台帳(労働者派遣の終了の日)
- 警備員名簿(退職の日)
- 運行指示書(運行の終了の日)
そもそも定めが無い書類
社内で回す稟議書や各種の申請書には、様式も保存年数も定めた法令がありません。この一覧に載らないのは、定めが無いからです。
ただし、綴じた見積書や契約書には定めがあります。1つの綴りの中で、本体と添付の年数が違う形になります。ここは稟議書の書き方で扱っています。
始末書や顛末書、社内の会議の議事録も同じです。紙そのものに年数の定めが無く、内容によって別の書類として年数がかかることがあります。始末書の扱いは始末書の書き方で扱っています。
年次有給休暇管理簿は、年数の数え方が他と違います。労働基準法施行規則24条の7は「与えた期間中及び当該期間の満了後五年間」としていて、与えた日からではありません。誰が対象になるかは年5日の義務の対象で扱っています。
保存年数ではなく選任や資格の定め
法令の中には、保存年数ではなく選任や資格を求めているものがあります。記録の性質が違うので、この一覧には載りません。
倉庫業法は倉庫ごとに倉庫管理主任者を選任して業務を行わせることを求めていますが、その記録の保存年数までは定めていません。年数の一覧に載らない義務があることは、頭に置いておくことになります。
電子で残しているものも、この一覧に載せます。電子帳簿保存法は年数そのものを定めた法律ではないので、年数の欄は元の法令のままです。区分の分け方は電子帳簿保存法の3つの区分で扱っています。
一覧に無い書類
ここに並べたのは、条文の本文を確かめたものだけです。載っていない書類については、自分で根拠に当たることになります。
税務に関する書類のように、別の法律に定めがあるものもあります。一覧に無いから保存しなくてよい、という意味ではありません。
産業廃棄物の管理票の写しも5年ですが、起算日が交付の日と送付を受けた日の2通りあります。マニフェストの返送期限にまとめています。
6分野の外では、宿泊者名簿が旅館業も民泊も作成の日から3年です(旅館業法施行規則4条の2、住宅宿泊事業法施行規則7条)。書く項目の違いは宿泊者名簿は旅館業と民泊で書くものが違うで扱っています。
保育の午睡チェック表は、確かめた資料に保存年数が書かれていませんでした。所管の自治体に確かめます。チェックの間隔の考え方は午睡チェックは何分ごとにまとめています。
見直す時期を決める
法令は変わります。とくに労務の「当分の間」は、いつ外れてもおかしくない書き方です。
年に一度、一覧の根拠を確かめ直す日を決めておくと、気づかないまま古い年数で回す形を避けられます。
保存年数の一覧でつまずくところ
保存年数の一覧は、作った後に使われなくなることが多くあります。理由は決まっています。
| つまずき方 | 何が起きているか | 直し方 |
|---|---|---|
| 年数しか書いていない | 起算日が分からず結局調べ直す | 起算日の列を足す |
| 根拠が書いていない | 本当かどうか確かめられない | 条文の列を足す |
| 他社の一覧をそのまま貼った | 自社に無い書類が並んでいる | 棚にあるものから作り直す |
| 年度で全部束ねている | 起算が始まっていないものを捨てる | 型ごとに束ね方を変える |
| 更新していない | 「当分の間」が外れても気づかない | 年に1回見直す日を決める |
捨てる判断まで書いておく
年数が過ぎたら必ず捨てる、というものではありません。保存期間は下限であって、上限ではありません。
争いごとが続いている件や、後から確認が入りそうな件は、過ぎていても手元に置いておくほうが説明できます。一覧に「例外の扱い」を1行入れておくと、迷いません。
介護の運営基準のように、同じ条の中で年数が付くものと付かないものが分かれている例もあります。介護の記録は2年で整理しました。
起算日の取り違えのほうが多い
年数を1年間違えることより、起算日を取り違えることのほうがよく起きます。詳しくは保存年数より間違えやすいのは起算日で扱っています。
宅建業の帳簿にある「閉鎖」のように、起算の前にひと手間が入る書類もあります。こちらは「閉鎖後5年」の閉鎖とは何をすることかで整理しました。
単位が「年」ではないものもあります。給食の検食は2週間以上で、しかも書類ではなく食品そのものです。検食と保存食の違いにまとめています。
よくある質問
- Q. 書類の保存年数は法律で一律に決まっていますか。
- 一律の定めはありません。書類の種類ごとに、それぞれの法令が年数と起算日を定めています。同じ会社の中でも1年・2年・3年・5年・10年が混在します。
- Q. 年数だけ覚えておけば足りますか。
- 足りません。起算日が書類ごとに違い、5通りに分かれます。記録した日、出来事が終わった日、最終の記載をした日、閉鎖した日、期間が満了した後です。年数だけで年度ごとに束ねると、まだ起算が始まっていない書類まで処分することになります。
- Q. 運送の帳簿はすべて同じ年数ですか。
- 違います。点呼記録簿と運行指示書は1年、運転者等台帳と指導監督の記録は3年です。起算日も4つとも違います。指導監督の記録だけ「営業所において」保存することが条文に書かれています。
- Q. 宅建業の従業者名簿はなぜ10年なのですか。
- 宅地建物取引業法施行規則17条の2第4項が10年と定めています。起算は最終の記載をした日からです。長く使った名簿ほど、手放せる日が遅くなります。
- Q. 労働者名簿は3年ですか、5年ですか。
- 労働基準法109条の本則は5年で、附則143条1項が「当分の間」5年を3年と読み替えています。年次有給休暇管理簿も同じ構造で、労基則24条の7が5年、則71条が当分の間3年としています。読み替えの条文は別々に置かれています。
- Q. 警備員名簿は何年ですか。
- 警備業法施行規則66条2項により、退職した後においても退職の日から1年間です。同じ条文で、指導計画書は実地に指導した日から2年、教育計画書と実施記録は当該年度が終了した日から2年と、3通りに分かれています。
- Q. 保存期間が過ぎたら捨てないといけませんか。
- 保存期間は下限であって上限ではありません。争いごとや後から確認が入りそうな件は、過ぎていても手元に置いておくほうが経過を説明できます。一方、持ち続ける理由が無いものは、個人に関する記載を抱え続けないために処分するほうが筋が通ります。
- Q. この一覧に無い書類はどうすればよいですか。
- ここに並べたのは、条文の本文を確かめたものだけです。載っていないから保存しなくてよい、という意味ではありません。税務に関する書類のように別の法律に定めがあるものもあるため、自社にある書類は根拠に当たって確かめることになります。
本記事は法令および官公庁の公表資料をもとに整理した参考情報です。法令への適合を保証するものではありません。実際の義務内容は e-Gov法令検索および所管官庁にご確認ください。内容は2026-10-16時点のものです。