高齢運転者への特別な指導|時間数の定めが無い指導
高齢運転者への特別な指導には、時間数が書かれていません。事故惹起は6時間以上、初任は合計35時間以上と決まっているのに、高齢者だけ数字がありません。
数字が無いぶん、何をどこまでやったかを、会社の側で説明できる形にしておく必要があります。
| 対象 | 時間 | 時期 |
|---|---|---|
| 事故惹起運転者 | 合計6時間以上 | 再度乗務する前 |
| 初任運転者 | 15時間以上+実技20時間以上 | 初めて乗務する前 |
| 高齢運転者 | 定めなし | 適性診断の結果判明後1か月以内 |
この記事の内容(7項目)
- 高齢運転者の特別な指導はいつ行うか
- 誕生日から数えない
- 診断が先、指導があと
- 3つの区分で起点が違う
- 結果が届いた日を記録する
- その後は3年以内ごと
- 65才以上の人を新しく雇ったとき
- 高齢運転者の指導に時間数の定めが無い
- 短すぎると説明できない
- 時間より中身を残す
- 記録に書く5つ
- 1人ずつ行う
- 外部を使ってもよい
- 高齢運転者の指導で何を話すか
- プライドへの配慮が明記されている
- レポートを書いてもらう
- 話す材料の作り方
- 否定から入らない
- 高齢運転者の指導は運転者等台帳に記載する
- 2通りのやり方がある
- 台帳の様式に欄があるか見る
- 適性診断の結果も台帳に付ける
- 添付した書面が外れないように
- 高齢運転者の指導と毎年の指導は別に数える
- 一般的な指導は毎年
- 記録の綴じ方を分ける
- 年間の計画に両方載せる
- 対象者を先に洗い出す
- 高齢運転者の指導の記録を何年残すか
- 台帳は退職後3年
- 「営業所において」を落とさない
- 電子で残すとき
- 一覧に載せる
- よくある質問
高齢運転者の特別な指導はいつ行うか
規則10条2項3号は、対象を「高齢者(六十五才以上の者をいう。)」と定めています。
実施の時期は告示1366号の第二章3(1)④にあります。「適性診断の結果が判明した後1か月以内に実施する」です。
誕生日から数えない
「65才になったら1か月以内」ではありません。数えるのは、適性診断の結果が判明した日からです。
診断を受けるのが遅れれば、指導も後ろへずれます。指導だけ先にやっても、告示の順番とは逆になります。
診断が先、指導があと
告示は「4の適性診断の結果を踏まえ」と書いています。結果を見ないと、何を指導するかが決まりません。
順番が入れ替わると、指導の中身が一般論になります。
3つの区分で起点が違う
同じ「特別な指導」でも、いつまでにやるかの数え方が区分ごとに違います。
| 区分 | 原則 | やむを得ない場合 |
|---|---|---|
| 事故惹起運転者 | 再度乗務する前 | 乗務開始後1か月以内 |
| 初任運転者 | 初めて乗務する前 | 乗務開始後1か月以内 |
| 高齢運転者 | 診断の結果判明後1か月以内 | — |
高齢運転者だけ「乗務する前」という縛りがありません。すでに乗っている人が対象だからです。
そのぶん、診断をいつ受けさせるかで全体がずれます。診断の手配が要になります。
結果が届いた日を記録する
1か月を数える起点なので、結果が届いた日を控えておきます。
受診した日と結果が判明した日は、たいてい違います。どちらで数えているかを社内で決めておきます。
その後は3年以内ごと
適齢診断は、65才に達した日以後1年以内に1回、その後は3年以内ごとに1回です(告示第二章4(4))。
診断のたびに、その結果を踏まえた指導が続きます。受診時期の数え方は適齢診断は1年以内にまとめています。
65才以上の人を新しく雇ったとき
告示は、65才以上の者を新たに運転者として選任した場合は「当該選任の日から1年以内」としています。
この場合、初任運転者としての特別な指導も別に要ります。2つは別のものなので、どちらもやります。
高齢運転者の指導に時間数の定めが無い
告示第二章2の表を見ると、事故惹起と初任には「時間」の欄があります。高齢運転者(4)には、時間の記載そのものがありません。
事故惹起・初任
- 内容が①〜⑥で並んでいる
- 時間数が書かれている
- 足りなければ指摘される
高齢運転者
- 内容は1文だけ
- 時間数は書かれていない
- 会社が決める
やらなくてよい、ではありません。規則10条2項は3号を他の2つと並べて書いています。義務であることは同じです。
短すぎると説明できない
時間の定めが無いからといって、5分では指導になりません。記録に「10分」と書いてあると、中身のほうが問われます。
診断の結果を1項目ずつ話すなら、それなりの時間がかかります。
時間より中身を残す
数字が無いということは、時間で示せないということです。代わりに、何について話したかを残します。
診断の結果のどの項目を取り上げたか。それに対して本人が何と言ったか。ここが記録の中身になります。
記録に書く5つ
時間で示せないので、記録の中身で示します。書くことは決めておきます。
| 欄 | 書くこと |
|---|---|
| 実施年月日 | 結果判明日から1か月以内か分かる |
| もとにした診断 | 受診日と結果の判明日 |
| 取り上げた項目 | 診断結果のどこか |
| 本人が出した運転方法 | ここが「自ら考える」の記録 |
| 実施した者 | 氏名 |
項目名だけの記録は、時間数の定めが無い指導では特に弱くなります。本人の言葉が1行入るだけで変わります。
1人ずつ行う
告示は「個々の運転者の加齢に伴う身体機能の変化の程度に応じた」と書いています。診断の結果は人によって違うので、まとめて行う形とは合いません。
一般的な指導のほうは、まとめて行えます。そちらとは性質が違います。
外部を使ってもよい
告示第二章3(3)は「外部の専門的機関を可能な限り活用するよう努める」としています。
自社でやるか、外に出すかは選べます。外に出した場合も、記録は会社に残します。
高齢運転者の指導で何を話すか
告示第二章2(4)の1文が、そのまま中身になっています。
「適性診断の結果を踏まえ、個々の運転者の加齢に伴う身体機能の変化の程度に応じた事業用自動車の安全な運転方法等について運転者が自ら考えるよう指導する。」
「自ら考えるよう指導する」です。教える形ではありません。
プライドへの配慮が明記されている
告示第二章3(2)は、気づいていない問題点があれば「運転者としてのプライドを傷つけないように配慮しつつこれを指摘することが必要である」としています。
ここまで書いてある指導は、他にあまりありません。長年やってきた人に対する指導だからです。
レポートを書いてもらう
同じく3(2)は、指導の終了時に「安全な運転についての心構え等についてのレポートを作成させるなどして、指導の効果を確認することが望ましい」としています。
望ましい、なので義務ではありません。ただ、本人が書いたものが残ると、「自ら考えた」ことの記録になります。
話す材料の作り方
診断の結果には、判断の速さや注意の配り方などの項目が出ます。その項目を、本人の運行に当てはめて話します。
「夜間の運行が多いので、この項目は効いてくる」というつなぎ方です。
否定から入らない
診断の結果が悪い項目から入ると、話が止まります。できているところを先に確かめてから、変わってきたところに移ります。
話し合いにならないと、告示が求めている形になりません。
高齢運転者の指導は運転者等台帳に記載する
告示第二章の柱書は、記録の置き場所を指定しています。
| 何を | どこに |
|---|---|
| 指導を実施した年月日 | 運転者等台帳に記載 |
| 指導の具体的内容 | 台帳に記載、又は書面を台帳に添付 |
| 適性診断の受診年月日 | 結果を記録した書面を台帳に添付 |
| 適性診断の結果 | 同じく台帳に添付 |
教育の記録を教育用のファイルにまとめていると、台帳の側が空になります。台帳に記載するか、添付するかのどちらかです。
2通りのやり方がある
告示は「年月日及び具体的内容を台帳に記載する」か、「年月日を台帳に記載したうえで、具体的内容を記録した書面を台帳に添付する」かを選べる書き方をしています。
台帳の欄が小さいなら、あとのやり方になります。
台帳の様式に欄があるか見る
市販の台帳には、指導の欄が小さいものがあります。日付しか書けない欄なら、添付の形に決めておきます。
台帳の記載事項は運転者台帳に書くことにまとめています。
適性診断の結果も台帳に付ける
指導だけでなく、適性診断の受診年月日と結果を記録した書面も台帳に添付します。
診断の結果は返ってきたら本人に渡すもの、と考えていると、会社の側に残りません。写しを取ります。
添付した書面が外れないように
台帳をファイルで回していると、添付が外れることがあります。運転者ごとに袋か個別フォルダにしておくと、外れません。
置き方の考え方は書類をどこに置くかにあります。
高齢運転者の指導と毎年の指導は別に数える
規則10条は、1項と2項で別のことを書いています。
1項 一般的な指導及び監督
- 全員が対象
- 毎年実施
- 告示第一章の内容
- まとめて行える
2項 特別な指導
- 3つの区分の人だけ
- そのつど
- 告示第二章の内容
- 1人ずつ
特別な指導をやったから今年の一般的な指導は済み、にはなりません。両方やります。
一般的な指導は毎年
告示第一章の柱書は「指導及び監督を毎年実施し」と書いています。年に1回です。
内容は第一章2に並んでいる項目です。指導監督の12項目で整理しています。
記録の綴じ方を分ける
一般的な指導は、実施した回ごとに受けた人を並べる形になります。特別な指導は、人ごとに1件です。
同じファイルに混ぜると、どちらが何件あるか数えられなくなります。
年間の計画に両方載せる
特別な指導は、診断の結果が出てから1か月以内なので、計画の時点では日付が決まりません。「◯月に65才になる人」の欄を作って、名前だけ先に載せておきます。
名前が載っていれば、診断の手配も忘れません。
対象者を先に洗い出す
年度の初めに、その年に65才になる人と、前回の適齢診断から3年が近い人を出しておきます。
台帳の生年月日と、前回の受診年月日から出せます。
この洗い出しを年度の初めに1回やれば、あとは期限の管理だけになります。毎月考える形にしません。
高齢運転者の指導の記録を何年残すか
規則10条1項は、記録を「営業所において三年間保存」としています。
| 書類 | 年数 | 根拠 |
|---|---|---|
| 一般的な指導及び監督の記録 | 3年(営業所において) | 規則10条1項 |
| 運転者等台帳 | 運転者でなくなった日から3年 | 規則9条の5第2項 |
| 台帳に添付した指導の書面 | 台帳と同じ扱い | 告示第二章 柱書 |
| 適性診断の結果の書面 | 台帳と同じ扱い | 告示第二章 柱書 |
| 点呼記録簿 | 1年 | 規則7条5項 |
特別な指導の記録は、台帳に記載するか添付するものなので、台帳と一緒に動きます。単独で3年ではありません。
台帳は退職後3年
規則9条の5第2項は、運転者でなくなった場合は直ちにその年月日と理由を記載し、3年間保存するとしています。
在職中に捨てるものではありません。添付した指導の書面も同じです。
「営業所において」を落とさない
10条1項は保存場所まで書いています。本社にまとめると、営業所で示せません。
写しを本社に置くのはかまいませんが、営業所の側を空にしません。
電子で残すとき
紙でなくてもかまいません。運転者ごとにまとまっている形を保ちます。
考え方は帳簿を電子で残すときにあります。
一覧に載せる
教育の記録と点呼の記録で年数が違うので、一覧で並べておきます。
一覧は会社に必要な書類の保存年数を業種横断で並べる、起算日は保存年数より間違えやすいのは起算日にあります。
よくある質問
- Q. 高齢運転者とは何才からですか。
- 65才以上です。貨物自動車運送事業輸送安全規則10条2項3号が「高齢者(六十五才以上の者をいう。)」と定めています。
- Q. 特別な指導はいつまでに行いますか。
- 適性診断の結果が判明した後1か月以内です(告示1366号 第二章3(1)④)。65才の誕生日からでも、受診した日からでもありません。
- Q. 何時間やればよいですか。
- 告示に時間数の定めがありません。事故惹起運転者は合計6時間以上、初任運転者は15時間以上+実技20時間以上と書かれていますが、高齢運転者の欄には時間の記載がありません。時間で示せないぶん、何について話したかを記録に残します。
- Q. 時間の定めが無いなら、やらなくてもよいですか。
- やります。規則10条2項は、高齢者を事故惹起者・新たに雇い入れた者と並べて書いています。義務であることは同じです。
- Q. 何を話せばよいですか。
- 告示は「適性診断の結果を踏まえ、個々の運転者の加齢に伴う身体機能の変化の程度に応じた事業用自動車の安全な運転方法等について運転者が自ら考えるよう指導する」としています。教える形ではなく、本人が考える形です。
- Q. まとめて行ってもよいですか。
- 「個々の運転者の…程度に応じた」とあるので、診断の結果ごとに中身が変わります。1人ずつ行う形になります。全員が対象の一般的な指導(規則10条1項)は、まとめて行えます。
- Q. 記録はどこに残しますか。
- 運転者等台帳です。告示第二章の柱書が、指導を実施した年月日及び具体的内容を台帳に記載するか、年月日を台帳に記載したうえで具体的内容を記録した書面を台帳に添付するとしています。適性診断も、受診年月日と結果を記録した書面を台帳に添付します。
- Q. 特別な指導をやれば、その年の一般的な指導は要りませんか。
- 要ります。規則10条1項と2項は別のものです。一般的な指導及び監督は毎年実施するもので、全員が対象です。高齢運転者もその対象から外れません。
- Q. 65才以上の人を新しく雇いました。
- 適齢診断は、当該選任の日から1年以内に1回です(告示第二章4(4))。あわせて、初任運転者としての特別な指導と初任診断も別に要ります。2つは別のものなので、どちらも行います。
- Q. 記録は何年残しますか。
- 一般的な指導及び監督の記録は、規則10条1項により営業所において3年間です。特別な指導の記録は運転者等台帳に記載または添付するものなので、台帳と一緒に動きます。台帳は、運転者でなくなった日から3年間です(規則9条の5第2項)。
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本記事は法令および官公庁の公表資料をもとに整理した参考情報です。法令への適合を保証するものではありません。実際の義務内容は e-Gov法令検索および所管官庁にご確認ください。内容は2026-10-02時点のものです。