対面でできないときの点呼|電話が使えるのはどこまでか
対面でできないときの道は、条文の上で2つに分かれています。ひとつにまとめて覚えると外します。
ひとつは「国土交通大臣が定める方法」、もうひとつは「運行上やむを得ない場合の電話その他の方法」です。前者は使ってよい方法、後者は例外です。
この記事では、条文の書きぶりで2つを分けてから、電話で済ませてはいけない場面を整理します。
国土交通大臣が定める方法
- 対面と同等の効果を有するもの
- 告示で方法が決まっている
- 条件を満たせば通常の手段
電話その他の方法
- 運行上やむを得ない場合
- 条文が括弧書きで置いている
- いつでも使える手ではない
この記事の内容(7項目)
- 対面点呼が原則になっている
- 業務後にもある
- 誰に対して行うか
- 記録は1年
- 報告と確認は別のこと
- 対面点呼ができないときの2つの道
- やむを得ない場合とは
- 人手が足りないは理由にならない
- 毎日使っているなら見直す
- 対面点呼でなくてもアルコール検知器は要る
- 常時有効に保持する
- 壊れたときにどうするか
- 営業所ごと
- 数値を残す
- 対面点呼でないときの記録に何を書くか
- 理由を「やむを得ないため」と書かない
- 月に1回数える
- 指示の欄を空けない
- 対面点呼でないときに指摘されるところ
- 記録が無い日がある
- 同じ筆跡が並ぶ
- 検知器の記録が無い
- どこまで残すか
- 対面点呼にできない時間帯を減らす
- 点呼をする人を増やすか
- 告示の方法を使うなら先に確かめる
- 運行の組み方を変える
- 中間点呼も忘れない
- よくある質問
対面点呼が原則になっている
貨物自動車運送事業輸送安全規則7条1項は、次のように書かれています。
貨物自動車運送事業者は、事業用自動車の運行の業務に従事しようとする運転者等に対して対面により、又は対面による点呼と同等の効果を有するものとして国土交通大臣が定める方法(運行上やむを得ない場合は電話その他の方法。次項において同じ。)により点呼を行い、次の各号に掲げる事項について報告を求め、及び確認を行い、並びに事業用自動車の運行の安全を確保するために必要な指示を与えなければならない。
| 号 | 報告を求め、確認するもの | 対象 |
|---|---|---|
| 一 | 酒気帯びの有無 | 運転者 |
| 二 | 疾病、疲労、睡眠不足その他の理由により安全な運転をすることができないおそれの有無 | 運転者 |
| 三 | 道路運送車両法47条の2第1項・2項の点検の実施又はその確認 | — |
条文は「報告を求め」「確認を行い」「指示を与え」の3つを並べています。聞くだけでも、見るだけでも足りません。
業務後にもある
7条2項は、業務を終了した運転者等に対しても点呼を行うことを定めています。業務に係る事業用自動車、道路及び運行の状況について報告を求め、運転者に対しては酒気帯びの有無について確認します。
交替した場合は、交替した運転者等に対して行った通告についても報告を求めます。
誰に対して行うか
条文は「運転者等」としています。運転者だけでなく、特定自動運行保安員も含む書き方になっています。
ただし、酒気帯びと疾病・疲労・睡眠不足の2つは「運転者に対しては」と限られています。
様式を作るときは、運転者と特定自動運行保安員で埋める欄が違う形にしておきます。同じ欄にすると、どちらの立場で点呼したのかが読めません。
記録は1年
7条5項は、点呼を行い、報告を求め、確認を行い、指示をしたときは、運転者等ごとに記録し、その記録を1年間保存することを定めています。
記録簿の書き方は点呼記録簿の書き方で整理しています。
報告と確認は別のこと
報告は本人が言うこと、確認は点呼をする側が確かめることです。条文は両方を並べています。
「体調は大丈夫か」と聞いて「はい」で終わると、報告だけで確認がありません。顔色や受け答えを見るところまでが確認です。
対面点呼ができないときの2つの道
括弧の位置をよく見ると、2つが別の階層にあることが分かります。
「対面により、又は…国土交通大臣が定める方法」までが本線です。電話その他の方法は、その括弧の中に「運行上やむを得ない場合は」という条件つきで置かれています。
やむを得ない場合とは
条文は「運行上やむを得ない場合」としか書いていません。どこまでがそれにあたるかは、条文からは読み取れません。
解釈は通達の側にあります。自社のどの運行が当たるかは、所管の運輸支局に確かめます。確かめた日と相手を記録に残しておけば、次に同じ判断ができます。
人手が足りないは理由にならない
一般に、運行そのものの都合を指す言葉であって、点呼をする側の都合ではないと読まれています。
点呼をする人がいない、朝が忙しい、というのは運行上の理由ではありません。ここを広く取ると、電話点呼が常態になります。
毎日使っているなら見直す
電話での点呼が毎日続いているなら、それは例外ではなく運用です。体制のほうを見る場面になります。
巡回指導や監査で最初に見られるところでもあります。
| 形 | 条文の上での位置 | 毎日続いたら |
|---|---|---|
| 対面 | 原則 | 問題ない |
| 告示の方法 | 対面と同等 | 条件を満たしていれば問題ない |
| 電話その他 | やむを得ない場合の例外 | 体制を見る場面 |
| 点呼なし | — | 条文を満たさない |
告示の方法は、条件を満たしているなら毎日使って構いません。例外扱いなのは電話のほうだけです。ここを混ぜると、使えるものを使わずに電話で回すことになります。
対面点呼でなくてもアルコール検知器は要る
7条4項は、方法に関わらず検知器の使用を求めています。
貨物自動車運送事業者は、アルコール検知器…を営業所ごとに備え、常時有効に保持するとともに、前三項の規定により酒気帯びの有無について確認を行う場合には、運転者の状態を目視等で確認するほか、当該運転者の属する営業所に備えられたアルコール検知器を用いて行わなければならない。
| 条文の言葉 | 実務での意味 |
|---|---|
| 営業所ごとに備え | 1か所にまとめて置けない |
| 常時有効に保持 | 壊れていない・期限内 |
| 目視等で確認するほか | 検知器だけでは足りない |
| 当該運転者の属する営業所に備えられた | どの検知器でもよいわけではない |
検知器の数値だけを見て、顔を見ていない点呼は条文を満たしません。「目視等で確認するほか」と書かれています。
常時有効に保持する
電源が入る、という意味だけではありません。校正や期限のあるものは、それが切れていない状態です。
期限を追う形にしておかないと、切れていることに気づけません。追い方は期限を1枚の表で追うで整理しています。
壊れたときにどうするか
壊れている検知器では確認できません。予備を置くか、すぐ取り替えられる形にしておきます。
「今日は壊れていたので目視だけ」を残すと、そこが指摘になります。
営業所ごと
条文は「営業所ごとに備え」としています。本社に1台置いて全営業所で使う、という形は取れません。
条文を満たさない形
- 検知器が本社に1台
- 数値だけ見て顔を見ない
- 期限が切れている
満たしている形
- 営業所ごとに備えてある
- 目視と検知器の両方
- 期限を追っている
数値を残す
「異常なし」だけだと、検知器を使ったかどうかが分かりません。数値を書く欄を置けば、使わざるを得なくなります。
0.00と書く欄があるかどうかで、記録の重みが変わります。
対面点呼でないときの記録に何を書くか
方法が対面でないなら、そのことと理由を記録に残します。
| 列 | 書くこと | なぜ要るか |
|---|---|---|
| 点呼の方法 | 対面/告示の方法/電話 | あとで見分けられる |
| やむを得ない理由 | 電話のときだけ | 例外だと示せる |
| 点呼をした人 | 氏名 | — |
| 酒気帯びの有無 | 検知器の結果と目視 | 条文の1号 |
| 疾病・疲労等 | 有無 | 条文の2号 |
| 日常点検 | 実施又は確認 | 条文の3号 |
| 指示の内容 | 与えた指示 | 条文が求めている |
方法の列があると、電話での点呼が月に何回あったかが出ます。数えられなければ、増えていることに気づけません。
理由を「やむを得ないため」と書かない
それでは何も書いていないのと同じです。具体的に何が起きたかを書きます。
「◯時到着予定が渋滞で△時になったため」のように書けば、あとで読んだ人が判断できます。
月に1回数える
方法の列で数えて、電話の割合が増えていないかを見ます。増えているなら、運行の組み方か体制に原因があります。
指示の欄を空けない
条文は「必要な指示を与えなければならない」としています。指示の欄が空欄の記録が並んでいると、そこが指摘になります。
特に指示することが無い日も、天候や道路の状況を1行書いておけば形になります。
毎日同じ文言が並んでいるのも、同じくらい弱い記録です。その日の運行に合った1行なら、短くて構いません。「◯号線で工事規制あり」で足ります。
対面点呼でないときに指摘されるところ
巡回指導や監査で、点呼はほぼ必ず見られます。
指摘されやすい形
- 方法の列が無い
- 電話が毎日続いている
- 指示の欄が空欄
説明できる形
- 方法と理由が書いてある
- 電話は月に数回で理由つき
- 指示が1行ずつ入っている
備え方は普段の形で決まります。準備の仕方は巡回指導の準備で整理しています。
記録が無い日がある
運行した日に点呼の記録が無ければ、点呼をしていないことになります。運行記録と突き合わせれば、すぐ分かります。
月に1回、自分たちで突き合わせておけば、そこは残りません。
突き合わせる相手は運行記録計や日報です。運行した記録があって点呼の記録が無い日を拾うだけなので、10分で終わります。
同じ筆跡が並ぶ
あとからまとめて書いた記録は、見れば分かります。その日に書く形にしておきます。
検知器の記録が無い
目視だけの記録が並んでいると、検知器を使っていないことになります。数値を書く欄を置いておけば、埋めざるを得ません。
どこまで残すか
記録は7条5項により1年間です。年数の一覧は会社に必要な書類の保存年数を業種横断で並べるにあります。
対面点呼にできない時間帯を減らす
例外を例外のままにしておくには、対面できる形を先に作っておくことになります。
電話での点呼は、たいてい同じ時間帯に出ます。月の記録を時刻で並べれば、そこが見えます。
点呼をする人を増やすか
運行管理者と補助者の体制で足りているかを見ます。1人しかいないなら、その人が休んだ日に必ず電話になります。
告示の方法を使うなら先に確かめる
「国土交通大臣が定める方法」は告示で決まっています。どういう方法が認められ、どういう条件が要るかは、告示と通達の側です。
この記事では中身に踏み込みません。導入する前に、所管の運輸支局に確かめます。方法の違いは告示で定める点呼の方法で整理しています。
運行の組み方を変える
出庫の時刻を少しずらすだけで、対面できるようになる場面があります。点呼の都合を、運行を組む段階で材料に入れます。
組んでから点呼をどうするか考えると、電話しか残りません。
荷主との時間の取り決めが先にあると、動かせないこともあります。そのときは、点呼できる体制のほうを合わせるしかありません。どちらも動かせないまま電話で埋めると、記録に例外が積み上がります。
中間点呼も忘れない
業務前も業務後も対面等でできない業務には、途中でもう1回の点呼が要ります。中間点呼はいつ要るかで整理しています。
よくある質問
- Q. 点呼は必ず対面ですか。
- 貨物自動車運送事業輸送安全規則7条1項は「対面により、又は対面による点呼と同等の効果を有するものとして国土交通大臣が定める方法(運行上やむを得ない場合は電話その他の方法)により」としています。対面が原則で、告示で定める方法も本線、電話は運行上やむを得ない場合の例外という並びです。
- Q. 「運行上やむを得ない場合」とは何ですか。
- 条文はこの言葉だけで、範囲までは書いていません。解釈は通達の側にあるので、自社のどの運行が当たるかは所管の運輸支局に確かめます。確かめた日と相手を記録に残しておくと、次に同じ判断ができます。
- Q. 点呼をする人がいないのは、やむを得ない場合ですか。
- 一般に、運行そのものの都合を指す言葉であって、点呼をする側の都合ではないと読まれています。人手が足りない、朝が忙しいは運行上の理由になりません。
- Q. 電話での点呼が毎日続いています。
- それは例外ではなく運用になっています。体制のほうを見る場面です。巡回指導や監査で最初に見られるところでもあります。
- Q. 点呼で何を確認しますか。
- 7条1項の3つです。運転者に対しては酒気帯びの有無、疾病・疲労・睡眠不足その他の理由により安全な運転をすることができないおそれの有無、そして道路運送車両法47条の2の点検の実施又はその確認です。加えて、必要な指示を与えることまでが条文の求めるところです。
- Q. 電話のときもアルコール検知器は要りますか。
- 7条4項は「前三項の規定により酒気帯びの有無について確認を行う場合には」としているので、方法に関わらず要ります。しかも「当該運転者の属する営業所に備えられたアルコール検知器を用いて」と限定されています。
- Q. 検知器は本社に1台でよいですか。
- 7条4項は「営業所ごとに備え、常時有効に保持する」としています。本社に1台置いて全営業所で使う形は取れません。
- Q. 検知器の数値だけ記録すれば足りますか。
- 足りません。条文は「運転者の状態を目視等で確認するほか」としています。検知器は目視に加えて使うもので、置き換えるものではありません。
- Q. 記録には方法を書きますか。
- 条文が方法の記載を明示しているわけではありませんが、書いておかないと電話での点呼が月に何回あったかを数えられません。方法の列と、電話のときの理由の列を置いておくと、増えていることに気づけます。
- Q. 点呼の記録は何年残しますか。
- 7条5項により1年間です。運転者等ごとに、点呼を行った旨、報告・確認・指示の内容などを記録します。
この記事で使うテンプレート
本記事は法令および官公庁の公表資料をもとに整理した参考情報です。法令への適合を保証するものではありません。実際の義務内容は e-Gov法令検索および所管官庁にご確認ください。内容は2026-09-25時点のものです。