運転者等台帳の記載事項|空欄になりやすい欄
運転者等台帳とは、運転者等ごとに1枚ずつ作り、その人に関することを1か所に集めておく帳簿です。貨物自動車運送事業輸送安全規則9条の5が作成と保存を求めています。氏名や免許の欄はどの会社でも埋まっています。指摘が集まるのは、9号の「指導の実施及び適性診断の受診の状況」です。
この記事では、9条の5が求めている10の記載事項を条文の並びどおりに分解し、空欄になりやすい欄がなぜ空くのかと、どう埋めるのかを整理します。まず、1枚の台帳がいつ動くのかから見てください。
この記事の内容(7項目)
- 運転者台帳(運転者等台帳)の記載事項は9号+写真
- 4号の日付を1つにまとめない
- 3号の住所は、変わったら直す
- 運転者台帳で空欄を指摘される欄は9号
- 9号に何を書くか
- 記録簿からの転記をいつやるか
- 運転者台帳の5号|運転免許に関する事項は「イ・ロ・ハ」
- 免許の更新をどう追うか
- 運転者台帳の6号・7号・8号は、書く中身が決まっていない欄
- 8号の健康状態に何を書くか
- 6号の「概要」はどこまで書くか
- 運転者でなくなったら「直ちに」記載して3年保存
- 「運転者でなくなった」に当たる場面
- 在職者と分けて綴じる
- 運転者台帳の10号の写真と、様式をどう作るか
- 台帳の様式に持たせておくもの
- 9号に並ぶのは2系統ある
- 他の業種にも同じ形の台帳がある
- 関係する帳簿とのつながり
- よくある質問
運転者台帳(運転者等台帳)の記載事項は9号+写真
運転者等台帳の記載事項は、9条の5の1号から9号までと、10号の写真の貼付です。条文の並びのまま挙げると、次のようになります。
| 号 | 記載すること | 埋まり方 |
|---|---|---|
| 1号 | 作成番号及び作成年月日 | 様式に印刷しておくと抜けない |
| 2号 | 事業者の氏名又は名称 | 同上 |
| 3号 | 運転者等の氏名、生年月日及び住所 | 住所が古いままになりやすい |
| 4号 | 雇入れの年月日及び運転者等に選任された年月日 | 2つの日付。片方だけにしない |
| 5号 | 運転免許に関する事項(イ・ロ・ハ) | ハの条件が落ちやすい |
| 6号 | 事故を引き起こした場合はその概要 | あった場合に書く |
| 7号 | 道交法108条の34の通知を受けた場合はその概要 | あった場合に書く |
| 8号 | 運転者等の健康状態 | 何を書くかが決まっていない |
| 9号 | 指導の実施及び適性診断の受診の状況 | いちばん空欄になる欄 |
| 10号 | 作成前6月以内に撮影した写真 | 単独・上三分身・無帽・正面・無背景 |
1号と2号は、様式に最初から印刷しておけば抜けません。手で埋める必要があるのは3号から10号までで、そのうち6号7号は「あった場合」に書く欄です。
4号の日付を1つにまとめない
4号は、雇入れの年月日と、運転者等に選任された年月日の2つを求めています。同じ日のことが多いからといって、様式の日付欄を1つにすると、ずれた人が出たときに書けません。
事務職として採用してから運転者に回った人、休職から復帰して再び選任された人。こうした形では2つの日付が離れます。欄は最初から分けておきます。
3号の住所は、変わったら直す
3号は氏名・生年月日・住所を求めています。生年月日は動きませんが、住所と氏名は動きます。
実務では、住所が変わったことを会社が知るのは、通勤手当や社会保険の手続きのときです。その手続きの流れに、運転者等台帳を直す動きを入れておくと古いまま残りません。
運転者台帳で空欄を指摘される欄は9号
運転者等台帳で空欄を指摘される欄は、9号の「指導の実施及び適性診断の受診の状況」です。条文は、10条2項の規定に基づく指導の実施と、適性診断の受診の状況を記載することを求めています。
この欄が空く理由は、たいてい1つです。指導の記録も適性診断の結果も、別の帳簿や書類として手元にあるからです。指導監督記録簿があり、診断結果の写しもファイルしてある。だから台帳の欄まで書かなくても分かる、という形になります。
とはいえ9条の5は、台帳に記載することを求めています。別のところにあるから書かなくてよい、という書き方にはなっていません。
空欄になる会社の言い分
- 指導の記録は指導監督記録簿にある
- 適性診断の結果は診断票がある
- 二重に書くのは手間
台帳側に書いておく効き目
- その人の受診の履歴が1枚で分かる
- 次にいつ受けるかの判断が早い
- 担当が替わっても追える
| 書く欄 | 中身 | どこから写すか |
|---|---|---|
| 受けた日 | 年月日 | 指導監督記録簿/診断票 |
| 種類 | 初任・適齢・特定・一般 など | 同上 |
| 実施した者 | 運行管理者の氏名/診断機関名 | 同上 |
9号に何を書くか
条文は書き方までは決めていません。実務で足りる形は、受けた日・種類・実施した者の3つを行にして並べるものです。
特別な指導なのか、初任なのか、適齢なのか。適性診断なら初任・適齢・特定のどれか。ここが分かれば、次にいつ何が必要かの判断ができます。
65才以上の運転者への指導は、時間数の定めが無い点が他と違います。高齢運転者への特別な指導で整理しています。
1行1件で追記していける形にしておくと、在職が長い人でも書き続けられます。1回分しか書けない欄にすると、2回目からどこに書けばよいか分からなくなります。
記録簿からの転記をいつやるか
指導を行った日にまとめて書くのが、いちばん抜けません。指導監督記録簿に書いたその場で、対象者の台帳にも1行足す形です。
後からまとめて転記する運用にすると、転記の作業そのものが後回しになります。転記する人と、転記する時点を決めていない台帳は、たいてい空欄のまま残ります。
運転者台帳の5号|運転免許に関する事項は「イ・ロ・ハ」
運転者等台帳の5号は、運転免許に関する事項をイ・ロ・ハの3つに分けて求めています。それぞれ次のとおりです。
| 書くこと | 落としやすいところ | |
|---|---|---|
| イ | 運転免許証又は免許情報記録の番号及び有効期限 | 有効期限を書き換えていない |
| ロ | 運転免許の年月日及び種類 | 上位免許を取ったのに古いまま |
| ハ | 条件が付されている場合は当該条件 | 眼鏡等・AT限定などが抜ける |
ハの条件は、免許証の「条件等」の欄に書かれているものです。眼鏡等、AT限定、中型車は中型車(8t)に限る、といったものが該当します。
眼鏡等の条件は、点呼のときに確認する内容とも関わります。台帳に書かれていないと、条件が付いていることを知らない担当者が点呼に入ることになります。
免許の更新をどう追うか
イの有効期限は、更新のたびに動きます。台帳を直すきっかけが無いと、失効に近づいていることに誰も気づきません。
実務では、台帳とは別に期限だけを並べた一覧を持ち、そちらで期限を追う形がよく使われています。台帳は1人1枚なので、期限が近い人を横に並べて見る用途には向きません。
一覧で気づいて、更新されたら台帳のイを直す。2つの役割を分けておくと、どちらも回ります。
更新期間の数え方と一覧の作り方は免許証の期限管理にまとめています。
運転者台帳の6号・7号・8号は、書く中身が決まっていない欄
運転者等台帳の6号から8号は、条文が中身までは決めていない欄です。だからこそ、様式の作り方で埋まり方が変わります。
6号は、事故を引き起こした場合の概要です。7号は、道路交通法108条の34の規定による通知を受けた場合の概要です。どちらも「あった場合」に書く欄なので、無ければ空欄で差し支えありません。
8号は、運転者等の健康状態です。6号7号と違って「あった場合」という限定が付いていません。
6号・7号(あった場合)
- 事故を起こした/通知を受けた
- 無ければ空欄で差し支えない
- 起きたら概要を追記する
8号(限定なし)
- 運転者等の健康状態
- 「あった場合」の限定が無い
- 何を書くかは会社が決めることになる
8号の健康状態に何を書くか
診断名をそのまま書く形は、扱いが重くなります。健康診断の結果は本人の情報なので、台帳に書くほど多くの人が見ます。
実務では、健康診断を受けた日と、就業に関して配慮していることの有無を書く形が扱いやすくなります。内容そのものは健康診断個人票の側に置いておきます。
何を書くかを決めずに欄だけ作ると、人によって書く深さが変わります。台帳を作る時点で、書く項目を決めておくことになります。
6号の「概要」はどこまで書くか
概要なので、事故報告書の内容を丸ごと写す必要はありません。日付、事故の類型、相手の有無、その後に行った指導。この程度で、後から経過をたどれます。
事故を起こした運転者には特別な指導の対象になる場合があります。6号に書いた事故と、9号に書く指導の行が対応していると、実施したことが1枚で読めます。
運転者でなくなったら「直ちに」記載して3年保存
運転者等台帳の保存期間は、運転者でなくなった日から3年間です。9条の5第2項は、運転者でなくなった場合に、その年月日と理由を記載したうえで3年間保存することを求めています。
記載の時点は「直ちに」です。月末にまとめて、年度末に整理して、という形ではありません。
起算日を作成日と取り違えると、まだ保存期間内の台帳を捨てることになります。在職が長い人ほど、作成日と退職日が離れます。
「運転者でなくなった」に当たる場面
退職だけではありません。社内で運転業務から外れた場合も、運転者でなくなったことになります。
この場合、後でまた運転者に選任されることがあります。そのときは4号の「選任された年月日」が新しく入る形になるので、台帳を作り直すのか、追記するのかを決めておくと迷いません。
在職者と分けて綴じる
退職者の台帳を在職者と同じ場所に置いていると、期限が来たものを探せません。抜いて別に綴じ、退職日の順に並べておくと、3年を過ぎたものが手前から出てきます。
3年の数え方は運転者台帳の保存期間にまとめています。在職中は年数に入りません。
保存年数を過ぎたら廃棄できますが、起算日を取り違えていないことを確かめてから捨てることになります。
運転者台帳の10号の写真と、様式をどう作るか
運転者等台帳の10号は、作成前6月以内に撮影した写真を貼り付けることを求めています。条件が細かく決まっていて、単独・上三分身・無帽・正面・無背景とされています。
「作成前6月以内」なので、古い写真を使い回すことはできません。一方、作成後に年月が経ったからといって撮り直しを求める定めは置かれていません。
| 条件 | 意味 |
|---|---|
| 単独 | 本人だけが写っている |
| 上三分身 | 上半身の一部まで。全身ではない |
| 無帽 | 帽子をかぶっていない |
| 正面 | 横向き・斜めではない |
| 無背景 | 背景に物が写っていない |
| 作成前6月以内 | 台帳を作る時点から6か月以内の撮影 |
台帳の様式に持たせておくもの
1号2号のように毎回同じものは、様式に印刷しておきます。そのうえで、追記していく欄は行が足せる形にしておきます。免許の更新、指導、適性診断、事故。どれも在職中に増えていくものです。
1回分しか書けない様式にすると、2回目から別紙になり、別紙が行方不明になります。台帳が1人1枚である意味が薄れます。
9号に並ぶのは2系統ある
9号に書き足されるのは、全員に毎年行う一般的な指導及び監督と、決まった運転者にだけ行う特別な指導の2つです。根拠が規則10条の1項と2項に分かれています。
前者の中身は指導監督の12項目で扱っています。台帳の9号には両方が並ぶので、どちらの指導なのかが分かる書き方にしておきます。
他の業種にも同じ形の台帳がある
人ごとに1枚作り、記載事項が号立てで決まっていて、その人が抜けた日から保存年数を数える。この形は運送だけのものではありません。人材派遣の派遣元管理台帳も同じ作りで、記載事項が法律と省令に分かれて置かれています。
様式を一から考える前に、同じ形の台帳を見ておくと欄の作り方の見当が付きます。根拠条文は違っても、追記していく欄が要るところは共通です。
関係する帳簿とのつながり
運転者等台帳は、その人に関する帳簿の入口にあたります。日々の点呼は点呼記録簿に、対面の点呼ができない運行は運行指示書に残ります。
巡回指導や監査では、1人の運転者から関係する帳簿をたどられます。台帳の9号が空欄だと、そこで話が止まります。埋めておく価値は、この1点にあります。
よくある質問
- Q. 運転者等台帳の記載事項は何項目ですか。
- 輸送安全規則9条の5の1号から9号までと、10号の写真の貼付です。このうち6号(事故の概要)と7号(道交法108条の34の通知の概要)は「場合」に書く欄なので、該当が無ければ空欄で差し支えありません。
- Q. 指導の記録は別に記録簿があります。台帳の欄も書くのですか。
- 9条の5第9号は、指導の実施及び適性診断の受診の状況を台帳に記載することを求めています。別の帳簿があることを理由に台帳の欄を空けてよい、という書き方にはなっていません。指導を行った日に、記録簿と台帳の両方へ1行ずつ入れる形にすると抜けません。
- Q. 9号には何を書けばよいですか。
- 条文は書き方までは決めていません。実務では、受けた日・種類(初任/適齢/特定など)・実施した者の3つを1行にして並べる形が使われています。1行1件で追記できる様式にしておくと、在職が長い人でも書き続けられます。
- Q. 免許の「条件」の欄は何を書くのですか。
- 5号ハは「条件が付されている場合は当該条件」です。免許証の「条件等」の欄にある、眼鏡等、AT限定、中型車は中型車(8t)に限る、といったものが当たります。条件が付いていない人は空欄で構いません。
- Q. 運転者等台帳の保存期間はいつからですか。
- 9条の5第2項により、運転者でなくなった日から3年間です。台帳を作成した日ではありません。在職が長い人ほど作成日と退職日が離れるため、作成日から数えると保存期間内のものを捨てることになります。
- Q. 「直ちに」とは、いつまでに書くのですか。
- 条文は「直ちに」とだけ定めていて、日数は置かれていません。月末や年度末にまとめて処理する運用は、この文言に沿いません。退職や配置換えの手続きと同じ流れで書く形にしておくと間が空きません。
- Q. 運転業務から外れただけでも台帳は3年保存ですか。
- 2項は「運転者でなくなった場合」としていて、退職に限っていません。社内で運転業務から外れた場合も、その年月日と理由を記載することになります。後に再び選任されたときの扱いは、作り直すのか追記するのかを社内で決めておくと迷いません。
- Q. 写真は何年かごとに撮り直すのですか。
- 10号が求めているのは「作成前6月以内に撮影した」写真です。作成後の経過年数について撮り直しを求める定めは置かれていません。ただし本人と見比べて分からない状態では、携帯品の確認という目的から外れます。
本記事は法令および官公庁の公表資料をもとに整理した参考情報です。法令への適合を保証するものではありません。実際の義務内容は e-Gov法令検索および所管官庁にご確認ください。内容は2026-10-01時点のものです。