宿泊者名簿は旅館業と民泊で書くものが違う|連絡先と職業
同じ「宿泊者名簿」でも、根拠の法律が違えば書くものも違います。
旅館業には連絡先があり、民泊には職業と宿泊日があります。
| 記載事項 | 旅館業 | 民泊(住宅宿泊事業) |
|---|---|---|
| 氏名 | あり | あり |
| 住所 | あり | あり |
| 連絡先 | あり(法6条1項) | — |
| 職業 | — | あり(法8条1項) |
| 宿泊日 | — | あり(規則7条3項) |
| 外国人の国籍・旅券番号 | あり | あり |
この記事の内容(7項目)
- 宿泊者名簿は旅館業と民泊で根拠が違う
- 法の本文に違いがある
- 省令でも違う
- 両方を営むなら様式を分ける
- 同じところも多い
- 法と省令のどちらに書いてあるか
- どちらの届出かを確かめる
- 宿泊者名簿に書くもの(旅館業)
- 連絡先は法の本文にある
- 2号は都道府県で変わる
- 宿泊日は条文の記載事項ではない
- 正確な記載を確保する措置
- 正確な記載を確保する措置とは
- 宿泊者にも義務がある
- 宿泊者名簿に書くもの(民泊)
- 職業が法の本文にある
- 宿泊日も条文にある
- 連絡先は条文に無い
- 知事が必要と認める事項は無い
- 任意で足してよい欄
- 正確な記載を確保する措置
- 宿泊者名簿はどちらも作成の日から3年
- 宿泊の日ではない
- 月ごとに束ねる
- 廃棄できる月を表紙に書く
- 個人情報として扱う
- 他の書類と年数を並べる
- 宿泊者名簿を備える場所も条文にある
- 施設に置かなくてもよい
- 民泊は「営業所又は事務所」
- 知事の要求で提出する
- すぐ出せる場所に
- 施設が複数あるとき
- 宿泊者名簿を電磁的記録にできるか
- 民泊の条件
- 旅館業については確かめる
- 提出できる形にしておく
- 3年は電子でも同じ
- 外国人の情報は別に見る
- よくある質問
宿泊者名簿は旅館業と民泊で根拠が違う
条文そのものが別です。旅館業法6条と、住宅宿泊事業法8条。
法の本文に違いがある
旅館業法6条1項は「氏名、住所、連絡先」、住宅宿泊事業法8条1項は「氏名、住所、職業」です。
法の段階で、すでに1つずつ違います。
省令でも違う
民泊の規則7条3項には「宿泊日」が入っています。旅館業の規則4条の2第3項には宿泊日がありません。
実務では日付を書くのが当たり前ですが、条文の記載事項として挙がっているかどうかは別です。
両方を営むなら様式を分ける
記載事項が違うので、1つの様式で兼ねると、どちらかに余計な欄か足りない欄が出ます。
施設ごとに、どちらの法律にもとづくものかを決めて様式を用意します。
同じところも多い
氏名、住所、外国人の国籍及び旅券番号、作成の日から3年という保存。この4つは共通です。
違うのは連絡先・職業・宿泊日の3つです。共通のほうが多いので、様式の骨格は流用できます。3つの欄だけを入れ替えます。
法と省令のどちらに書いてあるか
同じ記載事項でも、条文の位置が違います。
| 項目 | 旅館業 | 民泊 |
|---|---|---|
| 氏名・住所 | 法6条1項 | 法8条1項 |
| 連絡先 | 法6条1項 | — |
| 職業 | — | 法8条1項 |
| 宿泊日 | — | 規則7条3項 |
| 外国人の国籍・旅券番号 | 規則4条の2第3項1号 | 規則7条3項 |
| 知事が必要と認める事項 | 規則4条の2第3項2号 | — |
旅館業には「知事が必要と認める事項」があるので、都道府県によって項目が増えることがあります。
どちらの届出かを確かめる
自分の施設がどちらにあたるかは、受けている許可・届出で決まります。
迷うなら、届出の控えを見ます。「民泊のつもりで旅館業の許可を受けている」といった取り違えは、様式の作り直しになります。
宿泊者名簿に書くもの(旅館業)
旅館業法6条1項と規則4条の2第3項を合わせると、4つになります。
| 項目 | 根拠 | 誰について |
|---|---|---|
| 氏名 | 法6条1項 | 全員 |
| 住所 | 法6条1項 | 全員 |
| 連絡先 | 法6条1項 | 全員 |
| 国籍及び旅券番号 | 規則4条の2第3項1号 | 日本国内に住所を有しない外国人 |
| 知事が必要と認める事項 | 同2号 | 都道府県による |
連絡先は法の本文にある
「氏名、住所、連絡先」と並んでいます。省令ではなく法の本文なので、落とせません。
電話番号かメールアドレスか、といった中身までは条文が決めていません。
2号は都道府県で変わる
規則4条の2第3項2号は「その他都道府県知事が必要と認める事項」です。
都道府県によって追加される項目があるので、営業する地域の条例や要綱を確かめます。全国で同じ様式が使えるとは限らないところです。
宿泊日は条文の記載事項ではない
旅館業の側には、記載事項としての宿泊日がありません。書いてはいけないという意味ではありません。
実務では必ず要るので、欄を作っておきます。3年の保存を「作成の日」から数えるので、日付そのものは残さないと困ります。
正確な記載を確保する措置
規則4条の2第1項は、「当該宿泊者名簿の正確な記載を確保するための措置を講じた上で作成し」としています。
書かせるだけでなく、正しく書かれる形にすることまでが求められています。
正確な記載を確保する措置とは
条文は中身を決めていませんが、やることは決めておきます。
あとから電話で聞き直す形にすると、そのぶん正確さが落ちます。その場で確かめられる作りにしておきます。
宿泊者にも義務がある
法6条2項は、「宿泊者は、営業者から請求があつたときは、前項に規定する事項を告げなければならない」としています。
聞くのは営業者の側の義務ですが、答えるのは宿泊者の義務です。
宿泊者名簿に書くもの(民泊)
住宅宿泊事業法8条1項と規則7条3項を合わせると、5つになります。
| 項目 | 根拠 | 誰について |
|---|---|---|
| 氏名 | 法8条1項 | 全員 |
| 住所 | 法8条1項 | 全員 |
| 職業 | 法8条1項 | 全員 |
| 宿泊日 | 規則7条3項 | 全員 |
| 国籍及び旅券番号 | 規則7条3項 | 日本国内に住所を有しない外国人 |
職業が法の本文にある
「氏名、住所、職業」です。旅館業の「連絡先」の位置に、職業が入っています。
入れ替わっているのではなく、それぞれの法律が別に定めているだけです。
宿泊日も条文にある
規則7条3項が「氏名、住所、職業及び宿泊日のほか」としています。
記載事項として明記されているので、欄が無いと足りません。
連絡先は条文に無い
民泊の側には、法にも規則7条3項にも連絡先がありません。書いてはいけないわけではなく、条文の記載事項ではない、ということです。
実務では連絡先も取ることが多いので、任意の欄として持つ形になります。法定の欄と見分けられるようにしておきます。
知事が必要と認める事項は無い
旅館業の規則にある2号(都道府県知事が必要と認める事項)が、民泊の規則7条3項には見当たりません。
その代わり、自治体の条例で別に定めがあることがあるので、届出先に確かめます。民泊は自治体ごとの上乗せがあることで知られています。
任意で足してよい欄
条文の記載事項に無くても、足すこと自体は妨げられません。
法定の欄
- 民泊:氏名・住所・職業・宿泊日
- 外国人は国籍・旅券番号
- 空欄にできない
任意の欄
- 連絡先
- 人数・部屋番号
- 社内で決めるもの
正確な記載を確保する措置
規則7条1項も、旅館業と同じ「正確な記載を確保するための措置を講じた上で作成し」という言い方です。
ここは共通しています。どちらの法律でも、書かせて終わりではありません。
宿泊者名簿はどちらも作成の日から3年
年数と起算日は、旅館業も民泊も同じです。
旅館業(規則4条の2第1項)
- 正確な記載を確保する措置を講じて作成
- その作成の日から3年間保存
民泊(規則7条1項)
- 同じ文言
- その作成の日から3年間保存
宿泊の日ではない
条文は「その作成の日から」です。宿泊した日でも、チェックアウトの日でもありません。
受付で書いた日が起算日になります。実務ではほぼ同じ日ですが、言葉は「作成の日」です。
月ごとに束ねる
3年で捨てるので、月ごとに綴じておけば、37か月目に入った月のぶんをそのまま抜けます。
1枚ずつ日付を見る形にしません。1日1枚の用紙なら、月でまとめて封筒に入れておくだけで足ります。
廃棄できる月を表紙に書く
作成の月+3年。束の表紙に書いておけば、開かずに判断できます。
起算日の考え方は保存年数より間違えやすいのは起算日にまとめています。
個人情報として扱う
氏名、住所、旅券番号。3年残るあいだの置き場所も決めておきます。
置き方は書類をどこに置くかにあります。
他の書類と年数を並べる
宿泊者名簿は3年です。他に持っている書類と年数を一覧にしておきます。
一覧は会社に必要な書類の保存年数を業種横断で並べるにあります。
宿泊者名簿を備える場所も条文にある
どちらも、備える場所が省令で定められています。
| 旅館業(規則4条の2第2項) | 民泊(規則7条2項) | |
|---|---|---|
| 1号 | 旅館業の施設 | 届出住宅 |
| 2号 | 営業者の事務所 | 住宅宿泊事業者の営業所又は事務所 |
施設に置かなくてもよい
2号として事務所が挙がっているので、施設と事務所のどちらかで足ります。
複数の施設をまとめて事務所で管理する形も、条文の中に入ります。
民泊は「営業所又は事務所」
民泊の2号は「営業所又は事務所」と、旅館業より少し広い書き方です。
条文の言葉が違うので、両方を営んでいるなら、それぞれの条文で確かめます。
知事の要求で提出する
旅館業法6条1項も住宅宿泊事業法8条1項も、「都道府県知事の要求があつたときは、これを提出しなければならない」としています。
備えるだけでなく、求められたら出すところまでが条文です。
すぐ出せる場所に
事務所で管理するなら、求められてから取りに行く形にならないようにします。
どこに何があるかを、施設の側でも分かるようにしておきます。施設に置き場所を1行貼っておくだけで足ります。
施設が複数あるとき
施設ごとに置くのか、事務所でまとめるのか。決めておかないと、施設によって扱いが変わります。
決めたことを手順に書いておきます。受付に立つ人が替わっても、置き場所が変わらない形にします。
宿泊者名簿を電磁的記録にできるか
民泊の規則には、電磁的記録で代えられる規定があります。
| 条文 | 内容 | |
|---|---|---|
| 民泊 | 規則7条4項 | ファイル又は電磁的記録媒体に記録され、必要に応じ明確に紙面に表示されるときは、記載に代えられる |
| 旅館業 | 規則4条の2 | この記事で確認した範囲では、同様の規定は見当たらない |
民泊の条件
規則7条4項は、「必要に応じ電子計算機その他の機器を用いて明確に紙面に表示されるとき」としています。
紙に出せることが条件です。画面で見られるだけでは足りません。紙に出す手段がその場にあることまでが条件です。
旅館業については確かめる
この記事で確認した規則4条の2には、電磁的記録の規定が見当たりませんでした。他の規定や通知に定めがある可能性があるので、「できない」とは書いていません。
電子で持ちたいなら、保健所などに確かめます。
提出できる形にしておく
どちらの法律でも、知事の要求があったときは提出することになります。
電子で持つなら、提出できる形をあらかじめ決めておきます。求められてから形式を相談する形だと、その場で出せません。
3年は電子でも同じ
作成の日から3年という保存は、記録の形が変わっても動きません。
電子は消しやすいので、3年経つまで消せない形にしておきます。考え方は帳簿を電子で残すときにあります。
外国人の情報は別に見る
国籍と旅券番号は、どちらの法律でも記載事項です。受付での確認の仕方は、別にまとめています。
宿泊者名簿の外国人の欄にあります。
よくある質問
- Q. 宿泊者名簿には何を書きますか。
- 旅館業と民泊で違います。旅館業は法6条1項の氏名・住所・連絡先と、規則4条の2第3項の外国人の国籍・旅券番号ほか。民泊は法8条1項の氏名・住所・職業と、規則7条3項の宿泊日、外国人の国籍・旅券番号です。
- Q. 民泊だけ職業を書くのですか。
- 住宅宿泊事業法8条1項が「氏名、住所、職業」としています。旅館業法6条1項は「氏名、住所、連絡先」で、職業は入っていません。
- Q. 旅館業では連絡先が要るのですか。
- 法6条1項の本文に入っています。省令ではなく法なので、落とせません。ただし電話番号かメールアドレスかといった中身までは条文が決めていません。
- Q. 宿泊日は書かなくてよいのですか。
- 民泊は規則7条3項に記載事項として入っています。旅館業の規則4条の2第3項には宿泊日がありませんが、書いてはいけないという意味ではありません。実務では必ず要るので欄を作っておきます。
- Q. 両方を営んでいる場合、様式は1つでよいですか。
- 記載事項が違うので、1つで兼ねるとどちらかに余計な欄か足りない欄が出ます。施設ごとに、どちらの法律にもとづくものかを決めて様式を用意します。
- Q. 何年残しますか。
- どちらも作成の日から3年間です(旅館業は規則4条の2第1項、民泊は規則7条1項)。宿泊した日でもチェックアウトの日でもなく、「作成の日」からです。
- Q. どこに備えますか。
- 旅館業は旅館業の施設または営業者の事務所(規則4条の2第2項)、民泊は届出住宅または住宅宿泊事業者の営業所もしくは事務所(規則7条2項)です。どちらかに備えていれば足ります。
- Q. 提出を求められることがありますか。
- どちらの法律も「都道府県知事の要求があつたときは、これを提出しなければならない」としています。備えるだけでなく、求められたら出すところまでが条文です。
- Q. 電子で持ってもよいですか。
- 民泊は規則7条4項に、ファイルまたは電磁的記録媒体に記録され、必要に応じ明確に紙面に表示されるときは記載に代えられるという規定があります。旅館業については、この記事で確認した規則4条の2には同様の規定が見当たりませんでした。電子で持ちたいなら保健所などに確かめます。
- Q. 宿泊者が答えてくれない場合は。
- 旅館業法6条2項と住宅宿泊事業法8条2項が、宿泊者は営業者から請求があったときは記載事項を告げなければならない、としています。聞くのは営業者の義務ですが、答えるのは宿泊者の義務です。
この記事で使うテンプレート
本記事は法令および官公庁の公表資料をもとに整理した参考情報です。法令への適合を保証するものではありません。実際の義務内容は e-Gov法令検索および所管官庁にご確認ください。内容は2026-09-02時点のものです。